教員を退職すると失業保険はもらえない?退職後のお金の知識
退職するともらえると言われる、失業保険。
名前は聞いたことあるけど、詳しいことはよくわからない
といった方が多いのではないでしょうか。
私自身も退職後のお金に関して知識が浅く、実際に退職して初めて知ったことがたくさんありました。
知らなくて損をしないためにも、事前に知識を身につけておきましょう。
当記事では、教員が退職後に受け取れるお金について解説します。
私の体験談をもとに紹介するので、最後までじっくり読み込んで、悩みを解決するヒントにしてくださいね。
失業保険の基礎知識
失業保険という言葉を知っていても、
どういう制度なのかわからない
という方は多いと思います。
「失業保険」とは、正式には雇用保険制度の一部です。
失業した方が安心して生活を送りつつ、再就職に向けた活動できるように国から支給される基本手当のことを指します。
失業していても、生活のサポートがあれば、安心して再就職の活動ができますよね。
ただし、注意したいのは、教員は失業保険を受け取れない点です。
教員は失業保険をもらえない理由
残念ながら教員をはじめとした公務員は、雇用保険の適応対象外です。
第六条 次に掲げる者については、この法律は、適用しない。
雇用保険法第六条
国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業に雇用される者のうち、離職した場合に、他の法令、条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、求職者給付及び就職促進給付の内容を超えると認められる者であつて、厚生労働省令で定めるもの
給与明細で雇用保険料の負担が記載されていない点からも分かります。
なぜ公務員は適用対象外なのでしょうか?
その理由は、失業する可能性が低いからです。
企業に勤める人と比べると、公務員は仕事がなくなる確率はゼロに等しいと言えます。
不祥事などで免職になる可能性はありますが、その確率は微々たるもの。
つまり、公務員は身分が安定しており、失業する可能性が低いので「対象外」となっているのです。
教員は退職手当が支給される
公務員は身分が安定しているとはいえ、失業する可能性がゼロではありません。
もし失業した場合に、
失業保険がもらえないのは不公平なのでは?
と思った方もいるでしょう。
教員は雇用保険が適用されませんが、6ヶ月以上勤続期間がある方を対象に退職手当(退職金)が支給されるようになっています。
民間企業に勤めている方は勤務年数が3年以上ないと退職金が支給されない場合が多いです。
大企業を自己都合退職した場合
最低勤続期間 | 退職金受給資格あり |
---|---|
1年未満 | 7.5% |
1年以上2年未満 | 23.9% |
2年以上3年未満 | 15.0% |
3年以上 | 50.7% |
中小企業を自己都合退職した場合
最低勤続期間 | 退職金受給資格あり |
---|---|
1年未満 | 2.5% |
1年以上2年未満 | 18.0% |
2年以上3年未満 | 11.2% |
3年以上 | 51.5% |
しかし、教員(臨時的任用職員を含む)は6ヶ月以上勤続期間がある、かつ定年・自己都合退職する場合は退職金を受け取れます。
退職金は勤務年数や号給、勤める自治体などによって異なりますが、目安は以下の通りです。
勤続年数 | 自己都合退職金 |
---|---|
1年 | 10万5,450円 |
2年 | 21万9,360円 |
3年 | 34万1,733円 |
4年 | 47万4,028円 |
5年 | 61万3,949円 |
10年 | 144万470円+調整額 |
退職金については以下でまとめていますので、知りたい方はご覧ください。
「失業者の退職手当」がもらえる場合もある
とはいえ、教員は退職金がもらえると言っても、自己都合退職の場合は少ない傾向にあります。
これじゃ生活できない
と感じたかもしれません。
そこで受け取れる可能性があるのが「失業者の退職手当」です。
失業者の退職手当とは?
失業者の退職手当とは、支給された退職金と失業保険に相当する金額の「差額」のことを指します。
イメージは以下の通りです。
受け取った退職金が企業に勤めていると仮定した場合の失業保険より少ない場合、
別途「失業者の退職手当」を支給しますよ
ということです。
「失業者の退職手当」の受給条件
ただし、失業者の退職手当はすべての人が受け取れるわけではありません。
失業者の退職手当を受給するためには以下の条件を満たしている必要があります。
- 勤続期間が12月以上あること
- 勤続年数がおおよそ3年未満の正規教員
- 退職の日の翌日から起算して1年の期間内に「失業」していること
- 就職の意志があり、職を探していること
- 退職金が支給されない方
- 臨時的任用教職員
出典:東京都教育委員会公式HP /埼玉県教育委員会公式HP
単に働いていないという状態は失業ではありません。
したがって以下のような方は対象外となります。
・採用試験や学業に専念する方
・結婚して家事に専念する方
「失業者の退職手当」の受給期間
「失業者の退職手当」の受給期間は、退職翌日から1年間です。
ただし、1年間以内に妊娠・出産や怪我、病気などで30日以上職業につくことのできない方は、申請すると受給期間が延長できます。
延長期間は最長4年(通常の受給期間1年+延長期間3年)です。
延長する場合は、長期間働けないと判断した日から1ヶ月以内に下記の書類を提出する必要があります。
・受給期間延長申請書
・上記の申請書に必要な書類(給与明細の写しなど)
提出先は教育委員会、または退職時の所属校です。
具体的な提出書類や提出先は各教育委員会のHPをチェックしてみてください。
「失業者の退職手当」の支給額はいくら?
「失業者の退職手当」の支給額は、
支給額=基本手当日額×支給日数
で決まります。
- 基本手当日額:
退職前6ヶ月間の給与総額÷180日
上記の計算式で算出された日額に、年齢や勤続年数別に定められた給付率を乗じて、最終的な支給額が決まります - 支給日数:
雇用保険法の所定給付日数-待機日数(退職金÷基本手当日額)
参考:東京都教育委員会公式サイト
所定給付日数(自己都合退職の場合)
勤続期間 | 所定給付日数 |
---|---|
10年未満 | 90日 |
10年以上20年未満 | 120日 |
20年以上 | 150日 |
正確な金額や支給日数は手続き後に教育委員会から配布される書類に記載されています。
ちなみに筆者の場合は、15万円弱でした
支給は不正防止のため、2回以上に分けて行われます。1回目の支給額は7万、2回目は8万といったイメージです。
「失業者の退職手当」の申請方法
失業者の退職手当を申請する流れは次の通りです。
- 退職する
- 各教育委員会で退職票、または受給資格証を申請をする
退職時の所属校に申し出る場合もあります。
必要な書類は教育委員会のサイトに載っていることが多いです。記載がない場合は問い合わせてみましょう - 退職票・受給資格者証の交付を受ける
郵送で送られてくるケースが多いです - ハローワークで求職の申し込みを行う
最寄りのハローワークを調べたい方はこちら - 求職活動を行う
- 定められた日にハローワークで失業認定を受ける
日程は教育委員会から受け取った書類に記載されています - 受給に必要な書類を教育委員会に提出する
- 手当支給
5〜7を2回以上繰り返します
前述した通り、「失業者の退職手当」は待機期間があります。
すぐに支給されないため、申請は退職後なるべく早めがおすすめです。
ハローワークの失業認定
失業者の退職手当は、申請手続きをすれば受給できるわけではありません。
あらかじめ定められた期間内に、
求職活動を行なっている(失業している)
ということをハローワークに認定される必要があります。
失業認定を受けるために必要な求職活動とは以下の通りです。
- 求人に応募する
- ハローワーク窓口で求職相談をする
- ハローワーク主催のセミナーに参加する
- 許可・届出のある民間企業が行う職業紹介や職業相談を受ける
- 公的機関が行う職業紹介や職業相談を受ける
- 再就職に必要な国家試験、検定等の資格試験の受験など
出典:求職活動について
上記の求職活動を2回以上行う必要があります。
退職後に受け取れる給付3つ
転職先が決まっていない状態で教員を退職する場合は、
お金に困ったらどうしよう
と不安になると思います。
ここでは退職後に受給できる手当を3つ紹介します。
傷病手当金
傷病手当金とは、病気やけがによる療養中の生活を保証するための給付です。
1年6ヶ月を限度に、公立学校共済組合から支給されます。
教員を退職すると組合員の資格はなくなりますが、
・在職中に傷病手当金を受けていた方
・受けられる状態にあった方
は退職後も受給可能です。
傷病手当金を受け取るまでの流れは次の通り。
- 事前審査提出
- 審査(1ヶ月ほど)
- 審査結果
- 請求書作成・提出
- 支給
支給までに時間を要するので、早めに書類を準備しておきましょう。
詳しく知りたい方は公立学校共済組合公式サイトをご覧ください。
再就職手当
再就職手当とは、簡単に説明しますと「再就職お祝い金」です。
「失業者の退職手当」の受給資格決定を受けた後、早く再就職すると支給されます。
再就職手当の金額は、
「失業者の退職手当」の日額×支給残日数×60%または70%
で計算されます。
支給率は「失業者の退職手当」の支給残日数によって変わります。
「失業者の退職手当」の支給日 | 支給率 |
---|---|
30日以上残っている場合 | 60% |
60日以上残っている場合 | 70% |
早く再就職すると支給率が高くなる仕組みです。
ただし、再就職手当の支給を受けるためには、下記の条件を全て満たす必要があります。
- 受給手続き後、7日間の待機期間満了後に再就職した
- 就職日の前日まで「失業者の退職手当」の支給日が3分の1以上残っている
- 教員以外の仕事に就職している
- 1年以上勤務することが確実である
- 雇用保険の被保険者になっている
詳しく知りたい方はハローワークの公式サイトをご覧ください。
職業訓練受講給付金
職業訓練受講給付金とは、生活支援を受けながら再就職に役立つスキルや知識を学習するための手当です。
ハローワークに求職の申込みをしている方を対象に支給されます。
具体的な手当内容は次の通りです。
- 職業訓練受講手当:月10万円
訓練を受講している期間のみ1ヶ月ごとに支給されます - 通所手当:上限月4万2,500円
訓練施設に行くための交通費など - 寄宿手当:月1万700円
訓練施設に付属する宿泊施設やアパートに入居するための手当。ハローワークが住居変更を認めた場合のみ支給されます
給付金を受けるためには、以下の要件を満たしている必要があります。
- 本人の収入が月8万円以下
- 世帯全体の収入が30万円以下
- 世帯全体の金融資産が300万円以下
- 現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していない
- 訓練実施日に全て出席する
- 世帯の中で同時に給付金を受講して訓練を受けている人がいない
- 過去3年以内に、偽りその他不正の行為により、特定の給付金の支給を受けていない
- 過去6年以内に、職業訓練受講給付金の支給を受けていない
出典:求職者支援制度のご案内
ただし、上記のような要件を満たしていても必ず受給できるとは限りません。
面接や適性検査などの試験がおこなわれ、ハローワーク側が「支援が必要」と認めた方のみです。
教員は失業保険はもらえない!ただし退職金はもらえる可能性が高い
今回は教員を退職予定の方に向けて、
・失業保険がもらえない理由
・失業者の退職手当
・退職後に受給できる手当
を解説しました。
私自身も退職前に知らないことが多く、最初の手続きは手探り状態でした。
しかし、一度申請してしまえば、それ以降の手続きはさほど難しくありません。
教員を退職した後の手当に関しては、知らないがゆえに損をすることも多いです。
今回紹介した内容を踏まえて、事前に準備しておきましょう。